本稿は、東京神学大学夏期伝道実習における、2021年8月13日(金)の指路教会青年会Web学び会での奨励をまとめたものです。 神学生 金森一雄
聖書箇所:使徒言行録16章6〜10節
6:さて、彼らはアジア州で御言葉を語ることを聖霊から禁じられたので、フリギア・ガラテヤ地方を通って行った。
7:ミシア地方の近くまで行き、ビティニア州に入ろうとしたが、イエスの霊がそれを許さなかった。
8:それで、ミシア地方を通ってトロアスに下った。
9:その夜、パウロは幻を見た。その中で一人のマケドニア人が立って、「マケドニア州に渡って来て、わたしたちを助けてください」と言ってパウロに願った。
10:パウロがこの幻を見たとき、わたしたちはすぐにマケドニアへ向けて出発することにした。マケドニア人に福音を告げ知らせるために、神がわたしたちを召されているのだと、確信するに至ったからである。
福音の宣教は地球を西回りに行われているという話を聞かれたことがありますか?それは、パウロの第二次宣教が西回りの宣教となったことから、そのように言われているのです。今日はこのことを聖書から確認してみましょう。
本日の聖書箇所である使徒言行録の16章で記されています。パウロの第二次宣教旅行において、シリアのアンテオキアに派遣されていたパウロは(使徒15:22)、陸路で先の第一次宣教旅行で訪れていた、テルべからリストラ、イコ二オン(使徒16:1,2)の町を訪れています。そしてその地方で評判の良かったテモテを一緒に連れていくことにしました(使徒16:3)。ここまでの第一次宣教旅行で訪問したテルべ、リストラに行ってテモテを同行者として加えるまでは問題がなかった旅路です。それからアジア州での宣教の拠点となるはずのエフェソに向かおうとしたのでしょう。
すると、アジア州で御言葉を語ることを「聖霊」から禁じられた(使徒16:6)のです。
ここで第二次宣教行程について、一回目の計画変更を迫られたことになります。そのため、地中海沿いの海岸地方のエフェソには向かわずに、アナトリア半島の高原地帯が続くガラテア・フリギア地方を通って行きます。黒海に向かい、黒海の沿岸を西回りで行くことを考えたと思います。ところがミシア地方近くまで行って北上して黒海の沿岸地方に向かおうとしてビティニア州に入ろうとしたところで、今度は「イエスの霊」がそれを許さなかった(使徒16:7)というのです。二度目の計画変更をすることになりました。そしてミシア地方を通ってエーゲ海東岸のトロアスに下っていった(使徒16:8)のです。
参照:新共同訳付録聖書地図8『パウロの宣教旅行2、3』
そして三度目の計画変更というか、最後の確信が与えられることが起こります。その夜、パウロは一人のマケドニア人が「マケドニア州に渡って来て、わたしたちを助けてください」と願う、「幻」を見た(使徒16:9)のです。そして、「パウロがこの幻を見たとき、わたしたちはすぐにマケドニアへ向けて出発することにした。マケドノア人に福音を告げ知らせるために、神がわたしたちを召されているのだと、確信するに至ったからである。」(使徒16:10)と、記されているのです。
ところで、このパウロの第二回伝道旅行においてここまでは、「彼らは」とか「パウロは」と記されていたのですが、この10節から、「わたしたち」と一人称複数形が突然使われ始めます。その理由については諸説あります。ここでは、著者のルカがここトロアスからパウロの伝道旅行に加わったという、もっとも有力な説に従いたいと思います。
使徒言行録の作者は、ギリシャ人の医者であるルカです。ここから始まるパウロのヨーロッパ宣教旅行からルカが同行したからだというものです。マケドニアは、今のギリシャですからこの幻はルカが見たのではないかという学者もいるほどです。
三度にわたる計画変更によって、「神がわたしたちを召されているのだと、確信するに至った」(使徒16:10)と記されていますから、パウロとルカの宣教計画における主にある一致を見たのでしょう。なぜ、「聖霊」が登場し、次に「イエスの霊」が登場したのかは分かりませんが、分からないことは、それ以上深追いしても意味がないと思います。最後の決め手は「幻」です。それも、新しく加わったルカと同国人のマケドニア人が助けを呼ぶ幻です。ここで、聖霊、イエスの霊、幻がすべて繋がっていることが分かるのです。
これによって、パウロの宣教行程が決まり、当時の覇権者であったローマへの道に向かう準備が進められていくことになるのですから、主がなさることは素晴らしい、ハレルヤ!と言わざるを得ません。
私は、1994年1月に東京ドームで行われたビリーグラハム国際大会での、52,000人の決心者の一人です。そして2011年3月の東日本大震災の時に東京神学大学の公開夜間講座に通って献身への道を計画した者です。いずれも計画変更を迫られました。自分の人生を思い起こせば、計画変更の連続でした。そしてこの2021年8月、横浜指路教会に夏期伝道の実習生として遣わされて来ています。主のご計画の中にあることと確信して、この道を歩ませていただきたいと思っています。
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